トヨタ

男性向けになってもポルテはポルテ!?スペイドの魅力は?

複数の販売チャネルを持つトヨタでは販売チャネル違いの兄弟モデルというものがたくさんあります。
その中のひとつがこのスペイドで、違う販売店からはポルテとして販売されています。
ここではスペイドという車がどういう車なのかということと同時にポルテとどういう関係性があるのかも追求してみます。

トヨタ・スペイドってこんな車

トヨタは昔から販売戦略に長けた自動車メーカーとして有名ですが、特に需要が極端に偏ることを嫌います。
例えば、「若年層向け」とか「高齢者向け」といったような年齢層の違い、「スポーツモデル」とか「生活車」といった用途の違い、「ラグジュアリー系」とか「大衆車」といった車格の違いといったような感じです。
確かにこういったこともトヨタは嫌っているのですが、実はもっと嫌がる「需要の偏り」があります。
それが性別によるもの・・・要するに「男性向け」「女性向け」といったものです。

自動車というものは大雑把にいえば走るための道具ですから性別など全く関係ないものですが、ボディのデザインや使い勝手、そして自動車メーカー側の意向によって自然と性別が決められてしまうことがあります。
そもそも過去から「車を買う」「車を運転する」ということは男性がするものという概念があったため、すべての自動車は男性向けとされていました。

しかし、女性の社会進出と共に運転免許証の取得率、保有率が高まり、女性が車を購入する、女性が車を運転するということが多くなってきました。
そこで各自動車メーカーは、そういった女性ドライバーが好むような車を作るようになったのですが、女性向けに車を作るとどうしても軟弱なイメージになってしまい男性ドライバーの好まれなくなってしまいます。

自動車メーカーとしてみれば1台の車を開発して発売したからには男性、女性問わずに買ってもらいたいわけですからそういった傾向になるのは困ることなのです。
ただ、そういったことにいちいち対応していたのでは何かとお金がかかってしまうのと同時にリスクも高まることですので、だいたいの自動車メーカーは、わずかな女性ドライバーからの需要を期待しながら比率的に多い男性ドライバー向けの車を作ってお茶を濁すことにしているようです。

しかし、とにかくどんな手段を使ってもたくさんの車を売りたいトヨタはそれでは満足せずの豊富な資金力を使って1つのモデルにおいて「男性向けモデル」「女性向けモデル」といったような性別にあわせた車を作るようにしているのです。
そういった形で作られた男性向けモデルがこのスペイドです。

(スペイド:photo by Vasconium

スペイドは2012年7月に発売されたトヨタのコンパクトトールワゴンです。
このモデルの最大の特徴はトールワゴンながら左側だけに助手席ドアとリアドアを兼ねたスライドドアを持つことで、軽スーパーハイトワゴンやミニバンのようにスイッチ1つで開閉できる電動開閉機能も持っています。
右側は通常どおりの2つのヒンジドアとなっていますが、登録車で電動式スライドドアを持つことは発売当時としては珍しいことでした。

先ほども言いました通り、このモデルはポルテというモデルの男性向け兄弟車として作られている車で、ほとんどの部分をポルテと同じとしています。

ただ、最初からポルテと共に発売されつづけてきたのかというとそうではなく、ベースとなったポルテは2004年から発売されていて2012年に初めてのモデルチェンジを行った時にスペイドが初めて新規に設定された兄弟車として発売されたのです。
なので、スペイドとポルテの関係は2代目ポルテからという形になります。

(ポルテ:photo by Vasconium

スペイドとポルテの違い

ここではスペイドとポルテの違いについて見てみたいと思います。

●同じ部分

・ボディ形状
・プラットフォーム:Bプラットフォーム(ヴィッツのものを流用)
・ホイールベース:2600mm
・搭載エンジン:1NZ-FE型、2NR-FKE型
・搭載トランスミッション:CVT
・駆動方式
・サスペンション構造
・ブレーキ構造
・パワースペック
・インテリアデザイン:部分的な色違い以外は全く同じ
・インパネデザイン
・グレード構成
など

●違う部分

・ボンネットフード
・フロントバンパー
・ヘッドライトアッセンブリー
・リヤバンパー
・リヤコンビネーションランプ
・販売チャネル(スペイドはカローラ店・ネッツ店 ポルテはトヨタ店・トヨペット店)
・ボディカラーの設定

こうしてみるとまるで軽自動車のトールワゴンなどによくあるドレスアップモデル程度の違いしかないことがわかります。
要するに車の印象を大きく変えることができるフロント周りのデザイン、リヤ周りのデザイン、ボディカラーといったところを変え、女性向けのポルテをうまく男性向けモデルへと変貌させたわけです。

逆にこれだけの違いしかないということはスペイドも女性向けモデルといってもいいのかもしれません・・・人間でいうところの「男勝りの女性」「なよなよした男性」といったところでしょうか。

普通なら2倍の開発費がかかるところ、まるでグレードを一つ増やす程度のコストでもう1台のモデルを作ってしまった・・・トヨタもうまいところに気が付いたものです。
さすが「販売のトヨタ」ですね。

トヨタ・スペイドのモデル構成・グレード構成

スペイドには4つグレードと2つ駆動方式が用意されています。
駆動方式は標準がFFの2WDで、4WDモデルはスタンバイ4WDとなります。

・X グレード
・Y グレード
・F グレード
・G グレード

最廉価グレードの「X」グレードを基準としてそれに・・・

・トリコットファブリックシート生地
・フロントベンチシート
・運転席シートバックティッシュポケット
・運転席シートバック買い物フック
・リクライニング、クッションチップアップ機構付6:4分割可倒式リヤシート
・上下調整式リヤヘッドレスト
・メッキリング付マニュアルエアコン
・センタークラスター小物入れ
・天井照明付サンバイザー
・天井スピーカー(2個)

を追加したのが「Y」グレード、その「Y」グレードのフロントシートを・・・

・セパレートシート
・撥水タイプトリコットシート生地

にしたのが「F」グレード、そしてその「F」グレードに・・・

・トップシェード、IR・UVカット機能付高遮音性フロントグリーンガラス
・スーパーUV・IRカット・撥水機能付フロントドアガラス
・UVカット・撥水機能付フロントクォーターガラス
・タイマー付リヤウインドゥデフォッガー
・本革巻きステアリングホイール
・本革巻きセレクターノブ
・起毛タイプトリコットシート生地
・運転席快適温熱シート
・ナノイー機能付オートエアコン
・吸音材・遮音材の追加

を追加したのが最上級グレードとなる「G」グレードです。

トヨタ・スペイドの動力性能

スペイドでは駆動方式にあわせて2つのエンジンが用意されています。

FFモデル

・エンジン型式:2NR-FKE
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ
・ミラーサイクル

スペックは・・・

・最大出力:109ps/6000rpm
・最大トルク:13.9kgf・m/4400rpm

※リッターあたり:約72.6ps
※パワーウェイトレシオ:約11kg/ps

スペイドはトヨタの車ですが、このエンジンはトヨタの子会社であるダイハツが開発、設計、生産しているもので、東南アジア向けモデルの多くに採用されている2NR-FE型エンジンに疑似アトキンソンサイクルのミラーサイクル機能などを追加して低燃費化させたものがこの2NR-FKE型エンジンです。

4WDモデル

・エンジン型式:1NZ-FE
・エンジン排気量:約1.5リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ

スペックは・・・

・最大出力:103ps/6000rpm
・最大トルク:13.5kgf・m/4400rpm

※リッターあたり:約68.6ps
※パワーウェイトレシオ:約11.9kg/ps

FFモデルはダイハツ製エンジンでしたが、4WDモデルはトヨタ製のエンジンが搭載されています。
このエンジンは少し前のトヨタの小型モデル用エンジンとして主力エンジンとされていたもので過去にたくさんのモデルに採用されていたものです。
低燃費型エンジンではないものの燃費性能がなかなか優れており、故障も少ないことから実用型エンジンとしてはできのいいエンジンといえるでしょう。

トヨタ・スペイドの走行性能

男性向けモデルといっても女性向けのポルテと全く同じコンポーネントを使って作られている車ですので、はっきり言って走行性能は褒められてものではなく、街中を買い物するために走るといった程度の実用車としての性能しか持っていません。

トランスミッション

トラスミッションは全モデル、全グレードで共通のCVTが与えられています。
トヨタ名「Super CVT-i」とされるもので、名前は一人前ですがごく普通の電子制御油圧作動式の金属ベルト式無段変速機です。

特にこれといってメリット・デメリットがあるわけでもない本当の意味での「ごく普通のCVT」です。
ベルトの滑りが多く、ダルな走りしかできないのも一般的なCVTと同じです。

ボディ剛性・強度

コストを削減するために質の悪い鋼材、厚みの薄い鋼材を使って作られているのは他のトヨタやダイハツの車と同じですので、基礎となるボディ剛性はかなり低いといえます。
しかし、このスペイドはそれで終わりではありません。

まずスペイドのボディを見てください。
そして運転席のドア、運転席側のリヤドア、助手席側の大きなスライドドア、リヤハッチをすべて開けてみたところを想像してみてください。
どうでしょうか、かなり開放感がありませんか?

開放感があるのは乗っている人間にとってはいいことですが、開放感があるということは開口面積が広いということで、それすなわち外力によって変形しようとするボディやフレームを支える面積、変形をこらえようとする鋼材の面積が狭くなるということです。

もともとボディ剛性がないうえに支える面積が狭いということは、より一層ボディ剛性が低くなるということです。
新車から1年で、走行中の異音が始まり、スライドドアやリヤハッチの閉まりが悪くなるのも理解できます。
トヨタが作る車の中で1、2を争うほどのボディ剛性の低さを持っている車といっていいでしょう。

サスペンション構造

ポルテやそのベースモデルとなったヴィッツと同じシャシーを使って作られている車ですのでサスペンション構造も全く同じです。
フロントにマクファーソンストラット、リヤにトーションビームといったいわゆる低コストFFモデル用のサスペンション構造です。
これについてはないもいうことはありません、路面からの衝撃を吸収して乗り心地を良くしているだけの本来のサスペンションの役割を果たしているだけです。

4WDシステム

4WDモデルに採用されている4WDシステムはトヨタ名で「アクティブトルクコントロール4WD」と呼ばれているものです。
このシステムはフロントタイヤの空転を検知した時だけ、トランスファーに内蔵されている電気式カップリングを作動させてリヤタイヤにもトラクションを与えるといったいわゆる「スタンバイ4WD」です。

生活四駆と呼ばれるようなもので、オフロードを走るための4WDシステムではなく、日常の生活圏内で滑りやすい路面に出くわした時のスタック防止策、あるいは軽度のスタック状態から脱出するための簡易型4WDシステムです。

ブレーキシステム

スペイドは男性向けとは言え、実用的な車であるためブレーキに関しても実用モデルの範疇を超えないものが採用されています。
フロントにはベンチレーテッドディスクローターと1ポットフローティング式ブレーキキャリパーのディスクブレーキ、リヤにはリーディング・トレーリング式のドラムブレーキといった感じのコンパクトカークラスのよくあるパターンのものですが、スペイドにとってはこれで十分だと思います。

パワーの無いエンジンを搭載していることから走るスピードレンジは低いでしょうし、コーナーを攻めるような走りもしないでしょう。
車両重量も重たいものでも1.25トンぐらいですので、ブレーキにあまり負担が掛からないので、フロントがシングルポットでもリヤがドラムでも十分な制動力を得ることができると思います。

トヨタ・スペイドの燃費性能

スペイドは2012年に発売されたモデルでそれほど古いモデルではないのですが、ちょっと特殊な趣向性を持つコンパクトカーでありますし、燃費の良さを取るのであれば同クラスにアクアやヴィッツなどのハイブリッドモデルを選べばいいわけですので、このモデルでは燃費にこだわった作りがされていません。

エンジンは設計が古いものですし、低燃費装備も定番のものしか付けられていません。
しかし車両重量が比較的軽いというメリットがあることから思いのほか燃費性能は悪くないようです。

※採用されている低燃費装備

・可変バルブタイミング機構(2NR-FKE:VVT-iE 2NZ-FE:VVT-i)吸気側のみ
・電動パワーステアリング機構
・CVT
・オルタネーター制御
・アイドリングストップ機構(FFモデルのみ)
・ミラーサイクル(2NR-FKE型エンジン搭載モデルのみ)

●FFモデル(2NR-FKE型エンジン搭載)

・カタログ燃費:最大22.2km/L
・実燃費:約15km/L

●4WDモデル(2NZ-FE型エンジン搭載)

・カタログ燃費:最大16.0km/L
・実燃費:約11km/L

カタログ燃費としてはハイブリッドモデルではないことを踏まえて考えると「まあまあいい数字」ということになりますが、相変わらず実燃費との開きが大きすぎるため、実際には結構ガソリンを食うような気がします。

トヨタ・スペイドのライバルは?

スペイドが持つ「1.5リッターNAエンジンを搭載する電動スライドドアを持つトールワゴン」という要素に当てはまる車はどこを探しても兄弟車のポルテ以外にはありません。
そこでここではスライドドアの件は無視して1.5リッターNAエンジンを搭載したキャビン寸法の広いトールワゴンとして日産のキューブをライバルとしてあげてみましょう。

日産のキューブは同社のコンパクトカー、マーチをベースにして作られたコンパクトトールワゴンで、左右非対称デザインが特徴のモデルです。
若年層に人気の高いモデルですので、その辺もかなり似ていると思われます。

キューブのエンジンバリエーションは1.5リッターNAエンジンだけとなりますのでそれと比較しますが、スペイドの方は1.5リッターNAエンジンでも2つのエンジンが用意されているので、ここではFFモデルに搭載されているエンジンで比較したいと思います。

エンジンスペック比較

●スペイド(FFモデル)

エンジン形式:2NR-FKE型
1.5リッター直列4気筒DOHC NAエンジン

・最大出力:103ps/6000rpm
・最大トルク:13.5kgf・m/4400rpm

●キューブ

エンジン形式:HR15DE型
1.5リッター直列4気筒DOHC NAエンジン

・最大出力:111ps/6000rpm
・最大トルク:15.1kgf・m/4400rpm

エンジンの構成がほぼ同じですし、どちらもパワーを狙うような車ではない大衆コンパクトカーとして作られているので、パワースペック的にもたいした違いは見られません。

燃費比較

●スペイド(FFモデル)

カタログ燃費(JC08モード):22.2km/L

●キューブ

カタログ燃費(JC08モード):19.0km/L

カタログ燃費だけを見れば、「さすが燃費のトヨタ」ということになりますが、実燃費では同じぐらいとなることから燃費性能の比較においても互角といえるでしょう。

販売価格帯比較

●スペイド:約183万円~約213万円
●キューブ:約162万円~約203万円

販売価格帯は低額側、高額側両方においてスペイドの方が高くなっています。
それもキューブの価格は特別なモデルであるライダーモデルを含めていて、それでこの価格帯ですので、どれだけスペイドに高い価格が付けられているのかがわかると思います。

先進安全装備は「Toyota Safety Sense」ならぬ「Toyota Safety Sense C」

2016年6月に行われた一部改良で、スペイドにも先進安全装備が採用されました。
その先進安全装備というのが「Toyota Safety Sense」というもので、レーザーセンサーと単眼カメラ映像の2つのセンサーで障害物を検知する自動ブレーキシステムの「プリクラッシュセーフティ」、車線逸脱警報装置の「レーンディパーチャーアラート」、ヘッドライトのハイビーム・ロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム」がセットで搭載されています。

実はこの装備、搭載当時は「Toyota Safety Sense」ではなく「Toyota Safety Sense C」という名前だったのですがある時期から何の前触れもなく突然「Toyota Safety Sense」と改名されてしまいました。
その理由は・・・イメージが悪いからです。

どうしてイメージが悪いのかというと「Toyota Safety Sense C」搭載車において正常に機能していれば避けられた交通事故が避けられなかった、そしてもう1つこれは致命的なことですが、その装備自体が事故を引き起こしてしまったからです。

その事故というのが、記憶に残っている方もいらっしゃるかと思いますが、ZVW50型プリウスによる吉祥寺の飛び出し事故と成増の踏切事故です。
吉祥寺の事故はいわゆるペダルの踏み間違いで飛び出してしまうという事故だったのですが、路線バスという面積が大きい衝突対象がありながら「Toyota Safety Sense C」のプリクラッシュセーフティが機能せず暴走を食い止めることができなかったのです。

それから成増の踏切事故は、踏切を出たところに歩行者がいたことで踏切を渡っていたZVW50型プリウスのプリクラッシュセーフティが過剰に反応してしまい、踏切のど真ん中で自動ブレーキが作動、それによって踏切内に立ち往生してしまい、走ってきた電車と衝突してしまったのです。

片方はプリクラッシュセーフティが機能しなかったことによるもの、もう片方は過剰に反応してしまったことによって事故を回避することができなかったということになり、完全にZVW50型プリウスが、または「Toyota Safety Sense C」が悪いことになってしまいかけたのです。

こういった事実は現在のネット社会ではすぐに広まるもので、「ZVW50型プリウスがたて続けに交通事故を起こした」「Toyota Safety Sense Cがまったく役に立たなかった」ということが瞬く間に広まったのでした。

これではZVW50型プリウスやToyota Safety Sense Cを搭載したモデルの売れ行きが悪くなってしまう・・・そう考えたトヨタが取った対策は、「ZVW50型プリウスの生産中止」や「Toyota Safety Sense Cの廃止」ではなく、Toyota Safety Sense CとToyota Safety Sense Pという2つの先進安全装備をひとまとめにするという形で改名を行うことでした。

もちろんこんなことは公表されていません。
表向きはグレードアップさせたから同時に名称も統一したという形を取っていますが、事情通の中ではこういったことがひそかにささやかれているのです。

ということは、このスペイドでもZVW50型プリウスと同じことになってしまう可能性があるということになります。

まとめ

ポルテとほぼ同じといえるほどそっくりな兄弟車のスペイド、ちょっとした部品と販売戦略だけで対象とする販売ターゲット層を変更したのには脱帽です。

車としての魅力は・・・

「トールワゴンなのに電動スライドドアがついている」

といったことだけでしょうか。
あとは特にこれといったものは持っていないように思えます。

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