日産

日産・e-NV200の航続距離は300km?EV商用車としてどこまで使えるか?

石油埋蔵量の心配もなくなった今、自動車界でも「低燃費」を商売文句として使うのもいささか効果が薄れてきており、それまで「ハイブリッド」という文字が付けば飛ぶように売れていた車もあまり魅力的に見えなくなってしまいました。

そんな中でも日産が三菱の吸収合併したことによってより一層、積極的に取り組もうとしているのが究極のエコカーといえるEV(電気自動車)です。

日産にはEVのパイロットモデルとしてリーフという乗用車がありますが、そのリーフの技術を活用して作られた商用モデルがこの日産・e-NV200なのです。

EVというとまだまだ何かと使いにくい車ですが、それを商用車として発売するからには何か大きなメリットがあるはずです。
そのメリット探しながら日産・e-NV200を見ていきましょう。

日産・e-NV200ってこんな車

日産・e-NV200は、2014年の10月に発売された商用EVです。
このモデルは先に発売されていた中型1.5ボックス商用バンである、NV200バネットのプラットフォームを使い、そのプラットフォームに既に発売されていたEVのパイロットモデルであるリーフのパワーユニットを搭載する形で作られています。

日本国内におけるEV技術は、三菱自動車が一番進んでいて、2009年に軽自動車規格のEV、i-MiEVを発売して以来、2011年にEVで初となる軽商用バンモデルのミニキャプ・ミーブバンを、そして遅れること約1年後にミニキャブ・ミーブトラックを発売していました。
しかし、三菱のEVはどれもすべて軽自動車規格で作られたもので、国産EVに登録車はありませんでした。

国産登録車初のEVとして発売したのは三菱自動車の次にEV技術が進んでいる日産で、1からEVのためにプラットフォームを作り、そのプラットフォーム規格にあわせたシャシーにEM61型電気モーターと24kWhの容量を持つリチウムインバッテリーを搭載した5ドアハッチバックモデルを作ったのでした。

それが日産の初のEV、リーフでした。

リーフは2010年に初代モデルが発売され、途中マイナーチェンジや小変更などを行いながら進化していきました。
その進化の途中となる2014年にリーフに搭載するEVユニットを商用モデルとして発売されていたNV200バネットのボディに収める形で作ったのがこのe-NV200なのです。

早い話、このモデルはリーフとNV200バネットを足して2で割ったような車であるということです。
EV自体がまだ日本の自動車界に浸透していない中、更に用途が限定される商用モデルを作り、それを販売する日産、これは本気かもしれません。

日産・e-NV200のモデル構成・グレード構成

e-NV200はベースモデルとなるNV200バネット同様にバンモデルとワゴンモデルがあります。

バンモデル

バンモデルはモノグレードですが、定員(シートの数)やボディタイプによって3つのサブグレードが用意されています。

・GX(2人乗り) グレード
・GX(5人乗り) グレード
・GX ルートバン グレード

基本的にはシートの数や窓埋めされているかどうかの違いだけとなりますが、装備にわずかな違いも設けられているようです。

GX(2人乗り)」グレードを基準として考えると、そのグレードに・・・

・フォグランプ
・ラゲッジフロアカーペット
・折りたたみ機能付3人掛けベンチシート
・リヤヒーター ダクト
・リヤシート用アシストグリップ

を追加したのが「GX(5人乗り)」グレードで、逆に「GX(2人乗り)」グレードから

・UVカット断熱プライバシーガラス(側面・後方)
・スライドサイドウインドウ

を取りはずし、窓埋めした形のものが「GXルートバン」グレードとなります。

ワゴンモデル

ワゴンモデルもバンモデル同様にモノグレードで、定員(シートの数)によって2つのサブグレードが用意されている形となります。

・G(5人乗り) グレード
・G(7人乗り) グレード

まず「G(5人乗り)」グレードですが、こちらはバンモデルの「GX(5人乗り)」グレードの装備に更に快適装備が追加される形になっており

・ボディカラー同色塗装電動リモコンドアミラー
・ボディカラー同色塗装カラードドアハンドル
・ボディカラー同色塗装カラードバックドアフィニッシャー
・LEDポジションランプ
・ステアリングスイッチ
・ピアノ調センターパネル
・EV専用NissanConnectナビゲーションシステム
・バッテリーリモート充電機能
・バッテリータイマー充電機能
・4スピーカー
・バックビューモニター
・スエード調トリコットシート生地
・上下調整式ヘッドレスト
・6:4分割式セカンドシート
・15インチ×6Jアルミホイール
・リヤルームランプ
・スライドドアボトルホルダー
・内装フルトリム
・シートサイドトレイ(サード)
・運転席・助手席SRSサイドエアバッグシステム
・SRSカーテンエアバッグシステム

が装着されています。
そして、このグレードに更に・・・

・リヤマニュアルクーラー
・上下調整式ヘッドレスト付5:5分割式リクライニングサードシート
・サードシート マルチアップ機能(横跳ね上げ式)

を追加したのが「G(7人乗り)」グレードとなります。

日産・e-NV200の動力性能

通常の車でならばここでエンジンについてお話することになるのですが、このモデルはEVですので動力性能を決めるのは電気モーターということになります。

e-NV200にはリーフの初代モデルに採用されていたEM57型と呼ばれる交流同期電気モーターが採用されています。

パワースペックは・・・

・最大出力:109ps/3008~10000rpm
・最大トルク:25.9kgf・m/0~3008rpm

となります。
これまでレシプロエンジンやロータリーエンジンのパワースペックしか見てこなかったため、かなり違和感を覚えるパワースペックになっていますが、電気モーターにおいては電流を調整することによってある意味でパワースペックを作る、パワーの出方を作ることができますので、商用バンらしい使いやすさを求めたパワースペックにしたのでしょう。

このパワースペックをレシプロエンジンにあてはめてみると、最大出力109psは同社のコンパクトカー「キューブ」に搭載されている仕様の1.5リッターNAエンジンのHR15DE型と同じ、最大トルクの25.9kgf・mは大型セダンモデルの「フーガ」に搭載されている2.5リッターNAエンジンのVQ25HR型の最大トルクよりわずかに下回るといった感じです。
要するに「1.5リッターNAエンジンのパワーに2.5リッターNAエンジンのトルクを持つ」ということになります。

レシプロガソリンエンジンとしてみれば、パワーとトルクがかなりアンバランスになっていて、意図的にこういった仕様にしないと得ることができないようなスペックですが、パワーを得る方法が根本の部分から全く違うわけですから、このような形なっても不思議ではありません。

パワーの感じ方もエンジン回転数が上がっていく毎にぐんぐんトルクが増していくといったレシプロエンジンに対してEVではアクセルペダルを踏んで走り始めた瞬間からぐんぐん車が前に出ようとするといった感じです。
この感覚を例えるなら、スバルのBRZのマニュアルトランスミッションモデルで、エンジン回転数を6500rpmぐらいに固定した形でスパっとクラッチを繋いだような感じです。
結構、暴力的な加速をしそうですが、それではあまりにも危険ですので、そうならないように加速力を弱めるような制御がされています。

ただ、電気モーターの特性でトルクはかなり高いですが、回転数が高まるとトルクが細くなり、消費電力も多くなることで電流を絞るような制御がされていることから全域でトルクフルは走りができるというわけではありません。

日産・e-NV200の走行性能

e-NV200はEVですが、EVはパワーユニットが電気モーターになっただけでの車で、走りに関わる部分の作りはEVもレシプロエンジンモデルも基本的に同じです。

トランスミッション

日産のEVと通常のレシプロエンジンモデルで大きく異なるところがこのトランスミッションの部分でしょう。
レシプロエンジンモデルでは「エンジン回転数に比例する形でトルクが大きく変動する」という特性をカバーするためにそのエンジン回転数にあわせたギヤ比を持つトランスミッションが付けられますが、走り始めてすぐにマックストルクを発生させることができるEVでは、そういったカラクリは全く必要ありません。

なのでこのe-NV200には、トランスミッションはつけられていないのです。
一応、オートマチックトランスミッションのセレクターレバーのようなものがついていますが、それは電気モーターに流す電気の回路のスイッチや前進・後退を切り替えるための切り替えレバーにしかすぎません。

電気モーターの回転をダイレクトに(一応、ファイナルギヤはありますが・・・)伝えて走るのがEVなのです。

ボディ剛性・強度

日産のEVの元祖モデルとなるリーフでは、リーフ専用のシャシーやボディが用意されていますが、このe-NV200は既存の商用モデルであるNV200バネットの車体を使って作られているので、リーフよりは車体に作りに制限があります。

NV200バネットは、小型クラスから中型クラスの大衆FFモデル用に開発されたBプラットフォームを利用して作られている車で、少々ボディ剛性や強度に問題有りといえるのですが、NV200バネットを作る時に商用モデルらしく、ボディやシャシーに補強が施され、例えばジュークやキューブといった大衆モデルと同じプラットフォームを使って作られた車とは思えないほどのボディ剛性・強度が持たされています

その車体をそっくりそのままの状態でe-NV200に使っているわけですからこのモデルにおいても商用モデルとして十分なボディ剛性や強度、耐久性などを持っているといっていいでしょう。

バッテリーの位置

車体につけられている部品の中で一番重たいものといえば、レシプロエンジンを搭載する車ではエンジンとトランスミッションが1つとなったいわゆるパワーユニットと満タンの燃料タンクという2つのものになるのですが、e-NV200のようなEVでは、駆動用バッテリーがそれに該当します。

自動車の走行性能、特にコーナーリング性能を高めるためには、重たいものをできるだけ下の方に置くのが良いとされています。
これは、1つに振り子の原理で重たいものが上にあるとコーナーリング中にかかる横Gの影響を強く受けてしまい、ロールが増えてしまうからです。

しかし、レシプロエンジンモデルでは燃料タンクは形状を変えて何とか低い位置に置くことができますが、パワーユニットだけは置かれる位置にかなりの制約が出るため、結構高い位置に置かれてしまい、車体全体の重心が高いところになってしまうのです。

EVはこの点は有利です。
バッテリーは最低減の高ささえ確保できれば、形状は意外と柔軟に変えることができますし、高さを面積でカバーすることもできますので、一般的な自動車でも余っているスペースであるフロア下に重たいバッテリーを収めることができるのです。

これによってe-NV200はNV200バネットよりも重心が低くなり、走行性能の面でもNV200バネットより軽快な走りができるようになりました。

サスペンション構造

EVとはいっても所詮は商用車ですからサスペンションは重たい荷物を支えるためのものとして作られていることからたいした作りは与えられていません。

それにシャシー自体はNV200バネットと全く同じですから、サスペンション構造もフロントにマクファーソンストラット、リヤにリーフリジットといったように、同じものが採用されています。

商用車としては十分だと思います。

日産・e-NV200の電費性能

レシプロエンジンモデルではここで「1リッターの燃料でどれくらいの距離を走ることができるのか?」といった燃費性能を見ることになりますが、e-NV200はEVなのでそれができません。
なので、ここでは燃費性能ならぬ「電費性能」ともいえる「交流電力量消費率」で話をすすめていきます。

まずe-NV200のパワーユニットに関わるスペックを見ていきます。

●走行用電気モーター
・型式:EM57型
・定格出力75kW

●バッテリー
・種類:リチウムイオンバッテリー
・総電圧:350V
・総電力量:40kWh

●航続距離:約300km

●交流電力量消費率:150Wh/km

日産が諸元として正式に発表しているe-NV200の電費性能は「150Wh/km」となっていることがお分かりかと思いますが、この数字はe-NV200を走らせた時に1キロ走るごとにバッテリー内の電気を150Wh消費するという意味を持ちます。
この数字が果たしていい数字なのか?悪い数字なのか?わかりにくいのでここでは1km走るのにどれだけの電気代が掛かるのかで見てみます。

まずバッテリーを家庭用電源でフル充電するといくらかかるか見てみます。
ここでは1kWhあたりの電気代を昼間の電気料金である約30円とします。

このモデルのバッテリーは40kWhですので、それを満タンにするには・・・

1kWh単価約30円×40(kWh)=約1200円

となります。
これで満充電となり、日産が発表する航続距離300kmを信じるとすると・・・

約1200円÷300km=約4円

となります。

更に充電を夜間の家庭用電源(1kWhあたり約21円)で行ったとすると・・・

1kWh単価約21円×40(kWh)=840円
約840円÷300km=約2.8円

1km走るのにたった2.8円とは驚きです。

日産・e-NV200のライバルは?

登録車の中でEVの商用モデルとなる車は国産車の中にはこのe-NV200しかありませんので、ライバルとなるモデルも存在しません。
なのでここではEVの次にエコな車とされているハイブリッドカー、それも登録車の商用モデルのなかで唯一、ハイブリッドモデルが用意されているトヨタのサクシードと比較してみましょう。

パワーユニットスペック比較

●e-NV200(EM57型電気モーター)

交流同期電気モーター
・最大出力:109ps/3008~10000rpm
・最大トルク:25.9kgf・m/0~3008rpm

●サクシード・ハイブリッドモデル(1NZ-FXE型エンジン+1LM型電気モーター)

1.5リッター直列4気筒DOHC NAエンジン
・最大出力:74ps/4800rpm
・最大トルク:11.3kgf・m/3600~4400rpm

交流同期電気モーター
・最大出力:61ps
・最大トルク:17.2kgf・m

※システムパワー:100ps

純粋に比較することはできませんが、パワーもトルクもe-NV200の方が勝っているようです。

燃料費比較

ここでは1km走るのにいくらかかるのか?といったことで比較したいと思います。

●e-NV200

・1kWhの電気の単価:約21円(夜間料金)
・バッテリー容量:40kWh
・航続距離:300km

※21円×40=840円÷300=約2.8円

●サクシード・ハイブリッドモデル

・JC08モード燃費:27.8km/L
・レギュラーガソリン単価:137円

※137円÷27.8=約4.9円

1kmあたりで見るとたいした違いがないように見えますが、例えば年間10000km走ったとして、年にかかる燃料費を計算してみると

●e-NV200:28000円
●サクシード・ハイブリッドモデル:49000円

と大きな開きは生じます。
長い期間乗るならやはりEVのe-NV200がいいということです。

販売価格帯比較

●e-NV200(バンモデルのみ):約396万円~約406万円
●サクシード・ハイブリッドモデル:約182万円~約197万円

これは圧倒的にサクシードの方が安いようです。
それもそのはず、サクシードのハイブリッドモデルは既存のサクシードの車体にこれもまた既存のヴィッツやアクアに使われているハイブリッドシステムを乗せただけの混合型流用モデルで、ハイブリッドシステムの開発費はもうすでに回収が終わっているから価格を高くする必要がありません。
しかし、e-NV200のEVシステムはまだ歴史が浅く回収もまだできていない、更に開発費もTHS-II以上に掛かっていますので、その金額が車両価格にまだ上乗せされているので安くはできないのです。

300キロという航続距離

日産のEVシステムは日ごとにグレードアップされており、消費電力も少なく、バッテリー容量も大きくなってきていることからEVでかなり重要なスペックとなる航続距離が300kmまで延びました。

さて、問題はこの300kmをどう取るかです。

話によると実際には150kmぐらいが限界などとされています。
ここ最近は充電スポットの数も増え、昔に比べて充電スポットを躍起になって探すこともなくなりましたがそれでも150km程度の航続距離はどうなのでしょうか?

150kmといえば、東京から東北方面は栃木県の那須あたり、上越方面は群馬県の軽井沢あたり、西方面は静岡県の藤氏辺りということになりますが、商用モデルあるため長距離トラックのように高速道路を使って遠くまで行くということが少ないとしてもこの距離しか走れないというのは結構不安です。
それこそ充電スポットを常に身近に置いておく走り方となるでしょう。

例えば、先ほど比較しましたサクシードのハイブリッドモデルでは、実燃費20km/L程度で42リッターのガソリンタンクを持ちますので、1回の給油で単純計算840kmほど走ることができることになります。

商用車である以上、ここまでとは言いませんが1回の充電で最低でも300km~500kmぐらいは走ってもらわないと困ります。
どうやらe-NV200は、同都道府県内を走るルート配送やちょっとした納品程度にしか使えない商用モデルであるよう

まとめ

今さら「エコな車」などと虫唾が走るようなことは言いたくありませんが、このe-NV200は商用モデルながら

  • 大気汚染を極力しない車
  • 燃料費が安く済む車

といったメリットがある車といえます。
特に燃料費が安く済むという点はビジネスカーとしては非常にありがたいことではないでしょうか。

ただ、やはり航続距離の問題は依然としてあることから、実際に仕事に使うということを考えるのであれば、もう少し待って、もっと航続距離が伸びたモデルが出た頃に導入した方がいいかもしれません。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です