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バリバリの大衆車 日産・シルフィ、走行性能や燃費は?

大衆車」というと、ほとんどの方がトヨタのカローラを頭に思い浮かべると思いますが、トヨタだけでなく日産にも典型的な大衆車があります。
それが「シルフィ」です。
もっと細かく言えば「中型大衆セダンモデル」ということになり、カローラよりは一つ上のクラスの車となるわけですが、ではこのシルフィがどこまで大衆車としての性能を持っているのか。大衆車らしさをどれだけ持っているのかというところをみていきましょう。

大衆車って何?

シルフィのことに触れる前にまず「大衆車」ってなに?というところから始めたいと思います。

大衆車・・・読んで字のごとく「大衆のための車」ということになりますが、実のところ「大衆車」という言葉には正式な定義や意味合いなどは存在しません。
よく言われるのは・・・

「一般大衆が購入できて、維持していくことができるような車両価格、維持費を持つ車」

ということらしいですが、これではかなりあいまいで広義すぎます。
これでは、下は軽自動車から上は国産大型乗用車ぐらいまでの車がすべて該当してしまいます。
そもそも「一般大衆」といっても収入はまちまちで、どの車を買えるのか、どのくらいの税金を払っていけるのかも人それぞれです。

実際にはこういったことだけではなく、もっと細かく・・・

・車両価格が安いこと
・自動車税が安いこと
・自動車重量税が安いこと
・燃費性能がよくて燃料費が少なくて済むこと
・壊れにくくて修理費用が安く済むこと
・単純な構造でメンテナンス費用が安く済むこと

といったような金銭的な面に加えて・・・

・そこそこの人数を乗せることができること(4~5人程度)
・それなりの量の荷物を積むことができるスペースがあること(リヤラゲッジスペースやトランク)
・使いやすい無難な2ボックスボディや3ボックスボディを持つこと
・様々なシチュエーションに対応できるような無難なデザインであること
・フル定員でも他の車に迷惑が掛からない最低限の動力性能を持つこと

といった車の性能や仕様に関するところまで長い歴史の中でおのずと決められてしまっています。

これらの内容を見ると確かに「ごもっとも」といいたくなる部分が多いので、ここではこの定義を「大衆車」として扱い、日産のシルフィがどこまでこの定義に合致しているのかを見ていきます。

日産・シルフィってこんな車

シルフィは2012年に初代モデルが発売されたモデルで、日産が現在発売するモデル中でも比較的歴史の浅いモデルとなるわけですが、実はこのモデルには他の日産車にもまけずとも劣らないぐらい長い歴史があります。

シルフィは1959年に発売された小型モデルのブルーバードの系統を受け継いだモデルとして作られた車です。
初代モデル発売当時は「ダットサン・ブルーバード」という名称でしたが、1983年に発売された7代目モデルのU11型の発売と同時に「ブルーバード」とされました。

このモデルは1963年に発売された2代目モデルからスポーティーなイメージのある小型セダンモデルとされ、その後のモデルもずっとスポーティーセダン路線と一般的なセダン、いわゆる大衆セダンとしての路線という2つの方向性を持つモデルとして作り続けられました。

エンジンバリ―ションも初代モデルこそ時代的なことから1リッターとか1.2リッターあたりといった小さなエンジンを搭載する形となっていましたが、モデルチェンジを重ねていくうちに、1.3リッター、1.5リッター、1.8リッターと搭載するエンジンのエンジン排気量を拡大していき、9代目モデルではとうとう2.4リッターエンジンを搭載する3ナンバーを持つモデルにまでなりました。

まあこの2.4リッターエンジンモデルは特別なモデルですので、それを除外して見れば1.8リッターエンジンがメインとなっていて、その前後に1.5リッターや1.6リッター、時に2リッターエンジンが存在するという形であくまでも中型セダンの域を超えない範囲での車作りが続けられました。

しかし、1999年に日産がルノーに買い取られ、その後に行われた大規模な車種整理によって、販売台数が伸び悩んでいたブルーバードはその網に引っ掛かり生産終了となってしまったのです。

生産終了になってしまうと商品ラインナップにぽっかりと穴が開いてしまうことになるわけで、自動車メーカーとしてはその部分を穴埋めしなければなりません。
そこでルノー日産はブルーバードと同様に生産終了となったパルサーとこのブルーバードをあわせたような新しいモデルを作り、それを発売することにしたのです。
それが「ブルーバード・シルフィ」というモデルです。

このモデルはブルーバードと冠名がついているものの、ブルーバードより格下の小型モデル、サニーのプラットフォームを使って作られたモデルでどちらかというとブルーバードというよりもサニーとかパルサーを名乗った方がいいと思われるような車でした。
しかし、日産のひとつの歴史とも言っていいブルーバードがなくなってしまうのは残念だということで無理やり「ブルーバード」という名称を追加したようです。
なので、車体はそれまでのブルーバードとは全く関係なく、車名の一部と中型廉価セダンモデルということだけが同じという車になりました。

このG10型は2000年に発売され、その後2005年にG11型が、2012年にB17型が発売され、そのB17型が2019年現在の現行モデルとなります。
ちなみにこのB17型が発売される時に「ブルーバード」名が取り外され、「シルフィ」となりました。

このモデル系統はここまでに3つの車名を名乗ることになりましたがB17型は、ブルーバードとしては13代目モデル、ブルーバード・シルフィとしては3代目モデル、シルフィとしては初代モデルということになります。

日産・シルフィのモデル構成・グレード構成

シルフィは全モデルで同じボディ、シャシー、エンジン、トランスミッション、ドライブトレーン(FF)を使って作られている車ですので、設けられたモデルやグレードはすべて装備だけで差別化される形となります。

モデル構成は3モデル、グレード構成は5グレードです。

標準モデル

標準モデルは3グレード構成となります。

・Sグレード
・Xグレード
・Gグレード

S」グレードが最廉価グレードとなり、そのモデルに・・・

・オートライトシステム
・サイドターンランプ付電動格納式ドアミラー
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・インテリジェントキー
・プッシュエンジンスターター
・後席灰皿
・オートエアコン(「S」グレードはマニュアル式エアコン)
・エアコン左右独立温度調整機能
・後席エアコン吹出し口
・エンジンイモビライザー

を追加したのが、「X」グレードで、更に・・・

・キセノン(HID)ヘッドランプ
・木目調フィニッシャー
・6スピーカー(「S」「X」グレードは4スピーカー)
・スエード調&起毛織物シート生地
・195/60タイヤ(「S」「X」グレードは195/65タイヤ)
・16インチ×6.5J アルミホイール(「S」「X」グレードは15インチ×5.5JJアルミホイール)
・運転席・助手席SRSサイドエアバッグシステム
・SRSカーテンエアバッグシステム

を追加したのが最上級グレードとなる「G」グレードです。

標準モデルの装備を大衆車の観点で見ても、特に贅沢な装備は見当たりませんし、逆に物足りなさを感じることもなく、いかにも大衆車らしいといえるでしょう。

「ルグラン」モデル

ルグラン」というモデルはブルーバードの最後のモデルとなるU14型の時代に作られたモデル名で、U14型の時代では、ファミリー向けモデルとして扱われていましたが、このB17型シルフィでは上質なインテリアを持つハイグレードモデルとして扱われています。

1グレードのみが用意されています。

・Gルグラン グレード

このモデルは標準モデルの「G」グレードをベースとしており、「G」グレードの装備に・・・

・本革シート
・16インチ×6.5J 切削光輝アルミホイール
・専用合皮ドアトリム

を追加した形で作られています。

高級志向の「ルグラン」モデルといっても贅沢装備は本革シートぐらいですので、大衆車の範疇を超えていないように見えます。

「ツーリング」モデル

ツーリング」モデルは、日産の特装部門となるオーテックジャパン製のエクステリアパーツを取り付け、シルフィの外観をよりスポーティーに見せたモデルです。

このモデルもグレードは1つだけとなります。

・Sツーリング グレード

ベースとなっているのは標準モデルの「X」グレードで、その車体に・・・

・Sツーリング専用キセノン(HID)ヘッドランプ
・Sツーリング専用フロントグリル
・Sツーリング専用フロントエアロバンパー
・Sツーリング専用サイドシルプロテクター
・Sツーリング専用リヤスポイラー
・Sツーリング専用リヤエアロバンパー

といった専用パーツが付けられています。

少しスポーティーなイメージが欲しいという方に最適なモデルですが、見た目だけのドレスアップモデルですから果たして大衆車としてここまで必要かどうか・・・といったところでしょう。

日産・シルフィの動力性能

シルフィに用意されているパワーユニットはたった一つだけ・・・

・エンジン型式:MRA8DE型
・エンジン排気量:約1.8リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ

が採用されています。

このエンジンは商用モデルのNV150ADなどに採用されているMR18DE型エンジンをロングストローク化し、更に可変バルブタイミング機構を吸気系・排気系両方につけた形で改良を加えたもので、MR18DE型と比べて約1ccほどエンジン排気量が増したことからエンジン形式名が「MRA8DE」型とされました。

ロングストローク化と可変バルブタイミング機構を追加したことでMR18DE型よりもパワーにして約7ps、トルクにして0.2kgf・mほどパワーアップしています。

スペックは・・・

・最大出力:131ps/6000rpm
・最大トルク:17.7kgf・m/3600rpm

※リッターあたり約73ps

となります。

パワースペックの数字だけを見るとかなり非力なように見えますが、車両重量が1.3トン以下であることや大衆車であることを考えれば十分なのかもしれません。
とりあえずこれだけのパワーがあれば、フル定員で高速道路を走っても苦しくはないでしょう。

日産・シルフィの走行性能

大衆車と呼ばれる車は走行性能に関わる部分にかかるコストを極端に低くする傾向がありますので、このシルフィにおいてもあまり期待をしない方がいいかもしれません。

トランスミッション

エンジンバリエーションが1つであれば、トランスミッションも一つしか用意されません・・・大衆車ですから・・・。

用意されているトランスミッションは、日産の大衆モデルで定番となっているエクストロニックCVTです。
ごく普通のCVTで疑似有段変速のマニュアルモードも付けられていません。

低燃費も大衆車を形成するための1つの性能ですから、CVTが採用されるのも当然かと思われますが、ただドライバーの年齢層を考えるとマニュアルトランスミッションがあっても良かった気がします。

ボディ剛性・強度

大衆車の代表ともいえるカローラの最大の欠点がこのボディ剛性、サスペンションのスプリングが伸びたり縮んだりするようにボディがフニャフニャと捻じれる。

「でも安い大衆車だから仕方がないか・・・」

となるわけですが、このシルフィは違います。

さすが日本国内だけなく、欧米や中国、東南アジア諸国などでも生産、販売されているだけのことはあります。
日本人はボディ剛性にとことんあまいところがありますが、欧米ではボディ剛性が軟な車は許されません。
それに合わせて作られているためシルフィは頑丈なボディやシャシーを持つことになっているのです。

サスペンション構造

良くできた大衆車といってもやはりシルフィぐらいの車格となると途端にサスペンションにお金をかけなくなります。
同じ日産の大衆車でも大型大衆モデルのティアナでは、リヤサスペンションにマルチリンクが採用された四輪独立懸架とされていますが、そこまで生産コストをかけることができないこのモデルでは、フロントは独立懸架のマクファーソンストラットですが、リヤサスペンションにFF廉価モデルの定番サスペンションとなるトーションビームが採用されてしまいました。

同じBプラットフォームを使って作られたキューブやNV150AD、ジュークなどでも同じ形式のトーションビームが採用されているところを見るとどうやらBプラットフォームのリヤサスペンションの「標準仕様」がトーションビームであるようですので、それならシルフィにトーションビームが採用されていても仕方がないことと思えるかもしれません。

まあ、言い換えればこれが「大衆車ならでは」ということなのでしょう。

ブレーキ構造

ブレーキにおいても大衆車ならではのものが採用されています。
ブレーキング時に大きな負担のかかるフロントには冷却性能の高いベンチレーテッドディスクを用いたディスクブレーキが使われているのですが、リヤブレーキにはリーディング・トレーリング式のドラムブレーキが採用されています。

ドラムブレーキはディスクブレーキ以上に優れた制動力を発揮することができるブレーキ構造ですが、ブレーキ構造自体が外気に触れにくい場所にあり、熱をため込みやすいことからサイドブレーキとしてはよく使われますが、メインとなるブレーキシステムとしてはあまり使われなくなりました。
しかし、部品コストが安く上がるため、シルフィのような低価格大衆車やそれ以下の車格の車にリヤブレーキとして使われることがいまだにあります。

シルフィはコーナーをガンガン攻めたり、ハイスピードからのフルブレーキングを多用したりといったことをするような車ではありませんので、この部分に関してもこれでいいのかもしれません。

日産・シルフィの燃費性能

大衆車の良し悪しを判断するうえでエンジンパワーやサスペンション構造より重視されるのがこの燃費性能です。
最近では大衆車にも続々とハイブリッドモデルを投入するようになってきましたが、生産コストが高くなることから車両価格も高くなる、そしてハイブリッドシステム周りの故障が非常に多く、その故障を直すためにかかる修理費用も修理の手間も馬鹿にならないことからハイブリッドカーではなく、あえて通常のガソリンエンジンモデルを選ぶ方も少なくありません。

ただ、やはりたいそうなカラクリを持つハイブリッドカーよりは燃費性能は悪くなってしまいますので、その部分はきちんと理解したうえでシルフィの燃費性能を見てください。

・カタログ燃費:最大15.6km/L
・実燃費:約13km/L

ハイブリッドモデルではないことを考えるとなかなかいい数字ですが、それよりも実燃費とカタログ燃費にあまり差がないことに好感が持てます。

ハイブリッドモデルや複雑な低燃費装備を付けた車ですと、その装備を有効に使うように運転方法を取らないとなかなかカタログ燃費のようないい数字が出せないものですが、特にこれといった低燃費装備が付けられておらず、エンジンやトランスミッションなどといったものだけによって得られた燃費性能は運転方法にあまりとらわれずに平均して似たような燃費性能となります。

カタログ燃費はその車で発揮することができる最高の数値ですから、決まった運転方法や条件をクリアした上での燃費性能となるハイブリッドモデルでは実燃費と大きくかけ離れ、シルフィのような車はカタログ燃費も実燃費に近い数字を出すことができるわけです。

日産・シルフィのライバルは?

ハイブリッドシステムを持たない中型大衆車のシルフィ、この車と全く同じ位置にいるライバルとなるモデルはトヨタのアリオン・プレミオ兄弟車でしょう。

アリオン・プレミオ兄弟車は、トヨタが過去に販売していたカリーナ、コロナの後継モデルとして作れたモデルでアリオンはトヨタ店で、プレミオはトヨペット店で販売される販売チャネル違いの兄弟車となります。

シルフィ同様にハイブリッドシステムを搭載しないガソリンエンジンモデルだけの低価格中型大衆モデルで、エンジンバリエーションとしては2リッターエンジンモデル、1.8リッターエンジンモデル、1.5リッターエンジンモデルの3種類があります。

シルフィは1.8リッターエンジンモデルしかありませんので、1.8リッターエンジンモデル同士の比較をしてみます。

エンジンスペック比較

●シルフィ

エンジン形式:MRA8DE型
1.8リッター直列4気筒DOHC NAエンジン
・最大出力:131ps/6000rpm
・最大トルク:17.7kgf・m/3600rpm

●アリオン・プレミオ兄弟車

エンジン形式:2ZR-FAE型
1.8リッター直列4気筒DOHC NAエンジン
・最大出力:143ps/6200rpm
・最大トルク:17.6kgf・m/4000rpm

パワーとしてはアリオン・プレミオ兄弟車の方が12psほど上回っていますが、最大トルクに関してほとんど差がないことから実際に運転してみてもその違いに気が付かない程度の差でしかありません。

燃費比較

●シルフィ(「Gルグラン」グレード):最大15.6km/L
●アリオン(「A18 G-plusパッケージ」グレード):16.4km/L

カタログ燃費に関してもアリオン・プレミオ兄弟車の方が上ですが、実燃費で比較するとどちらのモデルも13km/L程度となるため、現実的にはほぼ同じといえるでしょう。

販売価格帯比較

●シルフィ:約200万円~約246万円
●アリオン・プレミオ兄弟車(アリオン):約223万円~約250万円

価格帯としてみると平均してアリオン・プレミオ兄弟車の方が高くなってはいますが、それほど大きな違いがあるわけではありませんのでこちらも同じようなものと受け取るべきでしょう。

Sツーリングも立派な大衆車

シルフィのことをいろいろ調べていくうちに大きな勘違いをしている方がたくさんいることに気が付きました。
その内容は?というと、シルフィの「Sツーリング」をスポーティーセダンと見る傾向・・・いや正確にいえば「見させる」傾向です。

Sツーリング」は確かにオーテックジャパン製のエクステリアパーツが付けられていて、標準モデルとはちょっとだけ違う外観を持ち、一見するとスポーティーなモデルに見えます。
しかし、スポーティーなのはあくまでも「見た目」だけで中身は純粋な中型大衆車である標準モデルと何一つ変わっていないのです。
エンジンやトランスミッション、サスペンションなどに手が入れられているわけではありませんし、速く走れるわけでもコーナーリング性能が向上したわけでもありません。
しかし、褒めちぎることを仕事としている方たちはこの見た目だけスポーティーな「Sツーリング」をスポーティーセダンと位置付けているのです。

こういった情報に惑わされてはいけません。
シルフィはあくまでも大衆車、「速く走るため」「かっこよく思われたいため」に乗る車ではないのです。

まとめ

こうしてみるとシルフィがいかに優れた大衆車(あくまでも大衆車の中での話ですが・・・)であるかがよくわかります。
特に他の中型大衆車ではあり得ないしっかりとしたボディやシャシーを持つところなど、日産ももっと前面に出して宣伝するべきです。

「これといって欲しい車はないが、無いと不便だ」ということで車を買うのであれば、このシルフィのような大衆車の中の大衆車がいいのではないかと思います。

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