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アッパーミドルクラス向け?日産・ティアナの本当のオーナー層はどこ?

アッパーミドルクラス・・・上層中流階級などと略されますが、早い話が「大金持ちではないがちょっとお金を持っている方々」のことを指す言葉です。
そういったアッパーミドルクラスに向けて日産が作ったのがこの「ティアナ」というモデルですが、残念ながら日産の思惑と世間の見方は違うようです。

ではティアナは本当はどういった車で、どういった方々が購入すべき車なのか探ってみましょう。

日産・ティアナってこんな車

日産が過去に作っていたローレルというモデル、このモデルは初代モデルこそ違いましたが、2代目モデルからはスカイラインのプラットフォームを利用して作られたいわゆる流用モデルで、スポーティーなイメージの強いスカイラインに対してちょっと高級感のあるいわゆるスペシャリティカーとかハイソカーといった雰囲気を持つ中型モデルとして作られていました。

一方で同じスカイラインのプラットフォームを流用して作られたモデルにセフィーロというモデルもありました。
このモデルはローレルと比べるとかなり遅いデビューとなりましたが、同じようにスカイラインベースでありながら実用性を備えた中型4ドアセダンモデルとして作られていました。

この2つのモデルが合併した形で作られたのがティアナというモデルで、ルノーの車種整理に引っかかった両車の後継モデル的な形で、ローレルの持つ「高級感」とセフィーロの持つ「実用性」を併せ持つ車として作られるようになったのです。
ただ、当初は中型モデルとして作られていた両車もモデルチェンジを繰り返すたびの大型化していき、旧日産体制の時に作られた最終モデルの段階ではどちらも2.5リッターエンジンを搭載する大型モデルとなっていましたので、両車が合体してできたモデルも中型ではなく、大型モデルに部類されるものとなっています。

初代モデルが発売されたのは2003年のことで当時発売されていた大型低ルーフミニバンのプレサージュやルノー日産初の駄作といわれていたムラーノ、そして海外向けモデルのマキシマなどに採用されていたFF-Lプラットフォームを使って作られました。
FF-Lプラットフォームを使ったモデルということですので駆動方式はFFとなります。

このモデルが発売された当初はルノー日産もかなり力を入れていたようで、贅沢にもZ33型フェアレディZにも採用されていた3.5リッターのVQ35DE型エンジンや2.3リッターのVQ23DE型エンジン、そして直列4気筒2.5リッターのQR25DE型エンジンといった3つのエンジンバリエーションを持った大型高級モデルといえるようなつくりが与えられたのです。
しかし、当時でも「大型高級モデルはFRレイアウトを持つもの」という概念が強かったため、FFモデルのティアナは受け入れられず、思ったほどの販売台数を上げることができませんでした。

それは2008年に行われたティアナとして初めてもモデルチェンジによって生まれた2代目モデルJ32型にも継続されてしまいました。

J23型では新しいプラットフォームであるDプラットフォームを使用し、ボディ剛性も向上、装備も充実、インテリアも高級なものを与えたのですが、相変わらず「FFの高級モデル」というのは受け入れられずにいました。

しかしこのモデルで意外な需要を見つけることになったのです。
その需要というのが、60代以上の高齢者ドライバーからのものでした。

それまで自分の趣味趣向にあったいろいろな車を乗り継いできたが、そろそろ年齢的にそういった車ではなく、そこそこ走り、そこそこ燃費性能を持つ、ある程度大きな荷物も載せられるし、何かあった時にそれなりの人数の人間を乗せられるといったいろいろな場面で使えるような無難な車が欲しいと思う方にこのティアナの2.5リッターエンジンモデルが注目されたのです。

要するにティアナを「FF大型高級セダンモデル」ではなく、「FF大型大衆モデル」としてみる方が多かったということなのです。

この動きを見た日産は2013年にモデルチェンジを行い、ティアナをL33型へと進化させたのでした。

L33型では先代モデルでの反省を含めて、大型高級セダンモデルから路線を大型大衆セダンモデルへと変更し、エンジンもパワーよりも燃費性能優先、自動車税などの維持費優先としたことで2.5リッターの直列4気筒エンジンとしました。
プラットフォームも無理して新しいものにするのではなく、生産コストや販売価格を下げるために先代モデルのものを継続して使うようにしたのです。
これが2019年現在の現行モデルとなります。

日産・ティアナのモデル構成・グレード構成

ティアナは大型大衆モデルというターゲット層が比較的狭いカテゴリーに属する車で、日産としてもそれほど大きな売り上げを求めていません。
なので、モデル構成もグレード構成も日産の車にしてはかなり単純化されています。

モデル系統は1つだけ、2.5リッターNAエンジン搭載のFFモデルだけ、グレード構成も装備違いのものが4つだけとなります。

・XE グレード
・XL グレード
・XVナビAVMパッケージ グレード
・XLナビAVMパッケージ グレード

最廉価グレードの「XE」グレードを基準として、そのグレードに・・・

・キセノン(HID)ヘッドランプ
・本革巻3本スポークステアリングホイール
・本革巻セレクターノブ
・インテリジェントエアコンシステム
・オーディオ6スピーカー
・運転席パワーシート
・助手席パワーシート
・助手席パワーオットマン

を追加装備したのが「XL」グレード、更に・・・

・アラウンドビューモニター
・ステアリングスイッチ(オーディオなど)
・NissanConnect ナビゲーションシステム
・LDW(車線逸脱警報)
・BSW(後側方車両検知警報)
・クルーズコントロール

を追加したのが「XLナビAVMパッケージ」グレード、そして更に更に・・・

・リバース連動下向ドアミラー
・本革シート生地
・前席エアコンディショニングシート
・インテリジェントキー連動運転席オートドライビングポジションシート
・215/55サイズ タイヤ(標準:215/60サイズ)
・17インチ×7.5J アルミホイール(標準:16インチ×7Jアルミホイール)

を装備したのが最上級グレードとなる「XVナビAVMパッケージ」グレードです。

最近は、大衆車にもずいぶん贅沢な装備を与えるようになったものです。

日産・ティアナの動力性能

高齢ドライバー向け大衆車となったL33型には、エンジンバリエーションがなく全グレードで同じエンジンを使うようになりました。

・エンジン型式:QR25DE型
・エンジン排気量:約2.5リッター
・エンジン形状:直列
・シリンダー数:4気筒
・バルブ構造:DOHC16バルブ

このエンジンは日産が過去に扱ってきた実用エンジンKA型エンジンの後継機種として開発されたもので、現在はNV350キャラバンのガソリンエンジンモデルやエルグランドの廉価モデル用のエンジンとしても使われています。

実用エンジンの流れをくむものであるため、パワー的にはあまり優れたものは持っておらず、スペックも

・最大出力:173ps/6000rpm
・最大トルク:23.9kgf・m/4000rpm

といった平凡なものしか持っていません。

ただこの車を運転する方の年齢を考えるとへたにハイパワーなエンジンを載せるより、日常的な運転で我慢を強いられない程度のパワーを持ったエンジンを載せた方が安全ですので、ティアナにとってはこれで十分だと思います。

日産・ティアナの走行性能

ティアナはそもそも優れた走行性能を求めるような車ではありませんので、走行性能を左右する装備も大衆車らしく「無難」なものが採用されています。

トランスミッション

ティアナを運転するドライバーは、速く走ろうとかスポーティーな走りを楽しもうという意識がほとんどなく、より楽に運転できることを求めます。
それこそエンジンをかけて、セレクターレバーをDレンジに入れて、アクセルペダルを踏めばするすると走り出す・・・こういったことを求めているわけです。

こういう車にはオートマチックトランスミッションが適しているのですが、燃費面を考慮するとCVTが最適ということになるのでしょう。
ティアナのトランスミッションは全グレードにおいて共通で「エクストロニックCVT」という日産独自のCVTが搭載されています。
日産の中で中程度のパワーを持つエンジンが搭載されたモデルによく使われるごく普通のCVTということになりますが、エクストレイルセレナにも変速幅の全く同じものが採用されています。

ボディ剛性・強度

このモデルはもともと大型高級FFセダンモデルとして作られた車で、先代モデルまではその路線を保ってきたわけですが、現行モデルにおいては大衆車化されてしまったもののその流れを受け継ぐために、大衆車にしてはかなりしっかりとしたボディやシャシーが持たされています。

多分、同クラスの国産大衆車の中で一番ボディ剛性が高いといってもいいでしょう。
長年、長距離を乗り続けてもそう簡単にボディやシャシーが音をあげることはないかと思います。

サスペンション構造

この車はボディ剛性が優れているだけではありません。
そのシャシーにつけられるサスペンション構造もかなり贅沢でいいものが採用されています。
構造的にはフロントにマクファーソンストラット、リヤにマルチリンクといった形なりますが、大型FFモデルといってもそれが大衆モデルとなると、通常はリヤサスペンションに安く作ることができるトーションビームやそれに類似したリジットサスペンションが採用されるものです。

しかし、このティアナには贅沢にも四輪独立懸架が採用されていてそれがこのモデルの誇るべきところの1つといえるでしょう。
特にリヤサスペンションとして採用されているマルチリンクは、昔から非常に評判が良いもので、日産のスポーツモデルや高級モデルなどにも採用されているものと基本構造は一緒です。

走行性能を向上させるアクティブトレースコントロール

比較的年齢層の高い方に運転されることが多いティアナにおいて、安全装備の採用は重要です。
それも自動ブレーキシステムのような「止まる」ということだかに特化したものではなく、道路を正確にトレースすることを促す機能も必要です。

そういったことで採用されているのがアクティブトレースコントロールという機能です。
これはある意味で走行性能を向上させるためのものとしてみることができますが、それだけなく安全装備としても見ることができるでしょう。

機能としては簡単にいえば、コーナーリングをしている時に内側のタイヤだけに軽くブレーキを掛けるというものです。
コーナーの内側にあるタイヤだけに軽くブレーキを掛けることで、ステアリング操作によって内側に曲げられたフロントタイヤによる曲がろうとする力に加えて、左右のタイヤにかかる力をブレーキでわざとアンバランスにすることで、そこでも曲がろうとする力を得ることができ、スムーズにコーナーリングをすることができるようになります。

特にオーバースピードでコーナーに突っ込んでしまったりアクセルペダルを余計に深く踏んでしまったりした時に出るアンダーステアを極力抑えることができ、それがコーナーリング性能の向上や安全性の向上に繋がるのです。

日産・ティアナの燃費性能

現行モデルになってから初めて大衆モデルとして作られるようになりましたが、FFセダンモデルの最上級モデルとしての立場もあるため、一般的な大衆モデルのようにエンジン排気量の小さいエンジンを積めないティアナ、それに低燃費装備も・・・

・ロックアップ機能付トルクコンバーター
・CVT
・可変バルブタイミング機構
・オルタネーター制御
・電動ポンプ式油圧パワーステアリング機構

といったよくあるものしか採用されていないため燃費性能はあまり良くありません。

・カタログ燃費:14.4km/L
・実燃費:13km/L

といった感じです。
せめてもの救いとなるのが実燃費がカタログ燃費にかなり近いことです。

日産・ティアナのライバルは?

FFの大型大衆セダンモデルということであれば、トヨタのカムリアリオン・プレミオ兄弟車あたりがライバルとして妥当と考えることになりそうですが、カムリはハイブリッド専用モデルですし、アリオン・プレミオ兄弟車は2リッターエンジンモデルとなりますので、2.5リッターガソリンエンジンモデルしかないティアナとは対等に比較することはできません。
となると、FFで大型大衆セダンで、2.5リッターのガソリンエンジンを搭載したモデルということで探すと・・・マツダのアテンザがライバルとして適当ということになるでしょう。

エンジンスペック比較

●ティアナ(「XV ナビAVMパッケージ」グレード)

エンジン形式:QR25DE型
2.5リッター直列4気筒DOHC NAエンジン

・最大出力:173ps/6000rpm
・最大トルク:23.9kgf・m/4000rpm

●アテンザ(「25S Lパッケージ」グレード)

エンジン形式:PY-RPR型
2.5リッター直列4気筒DOHC NAエンジン

・最大出力:190ps/6000rpm
・最大トルク:25.7kgf・m/4000rpm

エンジンの基本構造はどちらも同じようなものとなりますが、アテンザのエンジンは燃料供給方式として直噴が採用されているため、その分だけ燃焼効率がいいのか、ティアナより17psほど高いパワーを発揮しています。

燃費比較

●ティアナ(「XV ナビAVMパッケージ」グレード)

カタログ燃費(JC08モード):14.4km/L

●アテンザ(「25S Lパッケージ」グレード)

カタログ燃費(JC08モード):14.8km/L

アテンザにはティアナ以上にたくさんの低燃費装備が付けられているのですが、それにもかかわらずティアナの燃費性能とたいした違いがないのはちょっと残念です。
ミラーサイクル直噴を採用しているのですからもう少し良くてもいいのではないでしょうか。

販売価格帯比較

●ティアナ:約257万円~約352万円
●アテンザ:約355万円

価格的には両車とも同じような金額となりますが、アテンザの場合は2.5リッターエンジンモデルが1グレードしか用意されておらず、低価格モデルも高価格モデルもありません。
そのため、価格を安く抑えたいという方にとってはアテンザは厳しい車のように思えますが、アテンザには2リッターエンジンモデルがありますので価格を抑えたい場合はそちらを選択することでまかなえるというわけです。

まとめ

何でもそうですが、商品を売るというのは難しいもので、売る側が「こういった路線で売りたい」「こういった方々に買ってもらいたい」と思って商品を作っても、狙っていたターゲット層とは違う客層、違う用途でその商品が買われ、その動きにメーカー側が合わせるという形を取らなければいけない時もあるものです。

このティアナがまさにそうで序盤でもお話しましたように・・・

  1. 最初はFF大型高級セダンモデルとしてかなり贅沢な車として作ったのですが、大型セダンならフーガやスカイラインという選択肢があり、そちらの方がどちらかといえば魅力が高いことからあまり売れなかった。
  2. そこで装備の質を落として安い価格で売るようにしたら、年配者に受け入れられるようになった。
  3. それならということでいっそのこと高級路線を捨てて大衆車路線に切り替えてみたら・・・そこそこ売れるようになった。

といった形で、路線を大きく変更して初めて消費者に認められるようになった車です。

その結果としてオーナー層の年齢は極端に上がり、いわゆる高齢者向けのすこし高級な大衆モデルとなったのでした。

ちょっと言葉は悪いですが「おじいちゃん向け高級セダン」といった感じでしょうか。

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